や ん ば る へ
ここは、今帰仁城です。よく晴れた日の午後です。
今帰仁は、「なきじん」と読みます。
沖縄本島の西北部の本部半島に位置しています。
13世紀ごろに最も栄えたというこの城(ぐすく)からは、
さんご礁を抱く海と緑豊かな山が一望できます。
パーッと心も身体も広がって遠くへ伸びてゆくようです。
見晴るかす 今帰仁山野 ひかる海
問 ジャングル?
答 いいえ。
畑です。まぶしい光をいっぱいに浴びて勢いよく育っているのは、芭蕉です。
この幹から、繊維をとって、糸を紡ぎ、織り、芭蕉布を作るのです。
さらっとした風合いのこの布は、沖縄の気候風土によく合っています。
沖縄ならではの、島に根ざした布なのです。
今では、ここ喜如嘉地区だけで生産されています。
影ひかり いずれも強し 芭蕉里
じゃ、これは何だ? そう、バナナです。
バナナも芭蕉なんです。
芭蕉には、3種類あります。
糸芭蕉が、上で紹介した布を織るもの。
花芭蕉が、花が咲くもの。
実芭蕉が、バナナです。
沖縄のバナナは、島バナナといいます。
モンキーバナナより少し大きいくらい。
甘くてプリンプリンしています。
↓
これが、芭蕉布です。
素朴でナチュラルな印象。
きりっとした美しさ。
芭蕉布は キリリさらさら 一目惚れ
いずれも、村立芭蕉布会館に展示されています。
喜如嘉は、沖縄本島北東部・大宜味村にあります。
大宜味村は、芭蕉布の他、シークワーサーという柑橘類、長寿、ぶながやという妖精でも知られるところです。
芭蕉布は、13世紀ごろから織られていたようで、身分の差別なくあらゆる人が着用していたそうです。
沖縄各地で織られていましたが、戦後はだんだん少なくなって、今はここ喜如嘉だけです。
芭蕉の栽培から作品になるまで、すべて手作業です。
染料も沖縄で採れるものを使っています。
芭蕉布ができるまで
大きくわけて16もの工程があります。
1 原木栽培
野生の糸芭蕉は、繊維が堅いため、喜如嘉では栽培したものを使う。
糸芭蕉は、2〜3年で成熟するが、繊維を柔らかくするために、年に3〜4回、5月から9月の
間に葉と芯を切り落とす、葉落とし芯どめを行う。
2 苧剥ぎ(うーはぎ)
成熟した糸芭蕉の原木を切り倒す「うー倒し」は、10月から2月頃に行われる。
原木を1.5mほどに合わせて刈り取る。
原木の切り口は、20数枚の輪層をなしている。
根の切り口に小刀で切り込みを入れ、表から1枚づつ皮を剥いで4種類に分ける。
外側から粗い繊維、内へ向かうにつれ、細かい繊維がとれる。
とれた繊維のことを「苧(うー)」という。
ウヮーハー:座布団、テーブルセンターなど
ナハウー:ネクタイ、帯地など
ナハグー:着尺地(一反織るのに約200本の糸芭蕉がいる)
キヤギ:染色用(一番柔らかく、変色しやすいため)
これらをさらに、表裏2枚に分け、繊維になる表側は、鍋に入れやすいように折って束ねる。
上質の裏側は、絣結び用に使用する。
3 苧炊き(うーだき)
木灰を入れた大鍋を沸騰させる。鍋の底に丈夫な縄を敷いてその上に束ねた原皮を重ね、
ふたをして煮る。煮る時間は、繊維の種類と分量によって異なる。煮た原皮は、束がくずれないように
気をつけながら水洗いをし、木灰汁を落とす。
4 苧引き(うーびき)
束ねてある原皮をほどく。1枚の原皮を2つか3つに裂き、竹ばさみ「エービ」で根の方へ何回もしごき、
不純物を取り除く。しごきながら、柔らかいものは緯糸に、硬いものや色のついたものは経糸にと分け、
竿にかけて風の当たらない日陰で乾燥させる。
エービ
5 チング巻き
うーうみをするとき、長い繊維のまま水に浸すのは、具合が悪いので、チングと呼ばれる玉をつくる。
チングは、繊維を2、3本づつ根のほうから左手の親指に巻いてつくったこぶし大の鞠状のもの。
できあがったチングは、うーうみの前に水に浸してしぼっておく。
チング
6 苧績み(うーうみ)
繊維の根のほうから爪の先や指先で、繊維の筋に沿って裂くこと。
用途に応じて糸の太さを決めるが、座布団カヴァーなどを作るウヮーハーは太く、
帯地用のナハウー、着尺用のナハグーになるほど細くうむ。
裂いた繊維は、機結びで結んでいく。
結び目が抜けないように強く引っ張り、結び目はできるだけ短く切る。
芭蕉布の製作過程では、最も時間のかかる作業。
7 撚りかけ(よりかけ)
糸の毛羽立ちを防ぎ糸を丈夫にするために、経糸と緯絣糸には、撚りをかける。
作業をするときには、必ず霧吹きで湿気を与えながら撚りをかけ、経管に巻く。
撚りが甘いと織りにくく、撚りが強いと打ち込みにくくなり、絣合わせが難しくなる。
8整経(せいけい)
撚りかけした糸は、湿気を含んでいて腐りやすいため、すぐに経糸の長さに整える。
これを整経という。
9 煮綛(にーがしー)
「綛(がしー)」とは、糸をある一定の長さに何度も繰り返して束ねたもの。
このがしーの中で、染めるものは、そのまま木灰汁で煮て、精錬する。
こうすることで、糸が柔らかくなり、染色しやすくなる。
よく水洗いしてから、軽く絞り、両端を竿にかけて干す。
10 絣結び
絣用の糸は、まっすぐに引っ張って固定する。
次に絣模様に合わせて、染めない部分に「ウバサガラ」(原皮の裏皮)をあて、
ビニール紐で固く結ぶ。
藍染めの場合、結び終わった絣糸は、結んだ部分を重ねて丸く輪状にし、藍がめに
入るサイズに糸で固定する。
赤染めの場合も長いがしーのままではやりにくいので、粗く数カ所をとじておく。
11 染色
喜如嘉の芭蕉布では、主な染料として、テーチ(車輪梅)とエー(琉球藍)が使われる。
その他、木麻黄(モクマオウ)、マンゴー、相思樹、茜、山桃、福木、コチニ―ル、のぼたん
等が使われている。
12 巻き取り
染め上がった絣糸は、結んだ紐を解き、経絣糸と整経した地糸とを合わせて筬(おさ)に仮に
通し、さらにマチャ(緒巻)の棒にがしーの先を通す。
13 綜絖通し(そうこうどおし)
巻き取りに使った筬を外し、綜絖に経糸を1本1本通していく。
綜絖:経糸を数群にわけて上げ下げをするフレームで、経糸を通す目穴がついている。
14 筬通し(おさどおし)
綜絖に通した糸は、一対づつ順序よく筬通しで、筬に通していく。
筬:経糸の位置を整え、緯糸を織りこむのに使うもの。
薄い竹片をつらねて櫛形とし上下左右に枠をつけたもの。
鋼鉄または真鍮製の薄片を使ったものもある。
15 織り
芭蕉は、乾燥に弱くすぐに糸が切れるので、絶えず湿気を与えながら織る。
緯糸は、水にしばらく浸し軽く絞ってから杼(ヒ:緯糸を巻いたくだを入れて
左右にかよわせるもの)に入れる。
織りに最適の季節は5、6月の梅雨時。北風の吹く冬が織りにくい。
1日のうちでは、陽が照りつける時間帯が織りにくい。
16 反物の洗濯
喜如嘉では、織り上がった反物を木灰汁で炊き、最後の仕上げをするまでをまとめて
洗濯という。
石鹸で汚れを落とした反物は、木灰汁を沸騰させた大鍋で煮てよく水洗いする。
次にユナジ液に約2時間つけて中和させ、その後何度か、布を引っ張って幅を出したり、
丈を出したりする。(布引き)
茶碗で布の表面を整える。
最後にアイロンをかけて折り目をのばし、完全に湿気を取り除く。
ユナジ液(米酢):米粥に米粉と水を加えて発酵させたもの。
参考文献 芭蕉布の里 沖縄県大宜味村
平良敏子の芭蕉布 平良敏子 NHK出版
こうして、原木から布になるまで幾多の季節をくぐりぬけて芭蕉布はようやく誕生する。
キリッとしてサラッとしたたたずまいと風合い。
日に透かしてみるのが一番美しいと思う。
想い幾多 紡いで織りて 青空に
これはふくさ
喜如嘉は、たとえ芭蕉布がなくとも興味深いところ。
集落をブラブラするだけで、いろんな発見がある。
初めて来たのだから、新鮮なのは当たり前だけど、どこからか懐かしさが湧いてくる。
これは、不思議な感覚。
←ふつうの民家のコンクリート塀に不思議な文字が刻まれている。
全部で7文字。何だろう何だろうと思っていたら、それぞれの字は、
北斗七星の7つの星を表していること、
この文字を刻んで魔除けのようにしていることがわかった。
石敢当と同じような役割。
公民館の前庭に一人乗りブランコと二人乗りブランコ→
赤い瓦屋根にシーサー。沖縄の民家の特徴です。そして光が強くて影が濃いのです。
中の様子がちっともわからないので、明るくなるよう画像処理したのが右の写真です。
軒下に芭蕉があるのがわかりますか?
こういう時、デジカメって凄い!と思います。
まだまだ紹介したいのですが、キリがないので、このへんで。
ここまでおつきあいくださってありがとうございます。
それでは、また。
今に残るむかしを探してみつけたものたち
本当は、もっと大物を手に入れて、ご紹介したかったのですが・・・・・
テーブルセンター大 約26.5cm×49cm 2800円 |
テーブルセンター小 約15.5cm×23cm 2200円 |
ふくさ たしか 3600円 テグスでつって、 モビールのように飾っても素敵かも。 そのくらい、芭蕉の繊維は美しいのです。 本文でも書きましたが、日に宙に透かすと本当に じっと見つめてしまいます。 下の写真は、テーブルセンター大。 |
芭蕉ひも 約4m10cm 300えん この粗く綯われた感じが気に入る。 編み目に松ボックリや貝などを挿し込んで ガーランドを作ったら、なかなかのがでた。 下の写真参照。↓ |
わらじ おそらく、クバで編んだもの。 履くと下のかんじ。 足裏の感触が気持ちよい。 クバ草履 素足に伝う 心地よさ 1800円 |
島バナナ モンキーバナナより 少し大きいくらい。 普通のバナナより 果肉がプリプリしているのと、 甘さがほくっとしている。 これで480円と高いが それだけの美味しさはある。 |
これらのものたちをさらに詳しく知りたい方は、メールにてご連絡ください。 info@kaze.gr.jp