F  I E  L  D W O R K
 15時30分現場正面に出る。
 少しでも近くによりたいと思い、大学の裏門より校内へと入りました。大学はもう夏休み期間中のようでしたが、集中講義などが開講されていたのか学生の姿があちらこちらありました。学生たちの会話に聞き耳を立てると、ヘリコプターはどうやら1号館(本館)の東面に激突したようです。校内を突っ切ってまっすぐ本館を目指しました。現場が近づくにつれて、ヘリの燃料の臭いなのか、消火に使った消化剤の臭いなのか、とてもケミカルな臭いが鼻につくようになりました。本館の回りは、道路と同様、黄色のテープで囲まれています。その回りをMPやら消火服に身を包んだ米軍の消防士たちが慌ただしく往来をしています。時折、私服の関係者なのでしょうか野次馬連中にカメラを向けさかんにシャッターを切っています。大学構内の事故なのにも関わらず、大学関係者や日本の行政関係者等の姿をあまり見ることはできません。もう既に現場は、米軍指揮下の管理状態になってしまっているようです。本館を西側から見るこの位置からでは、激突面を見ることができません。そこで、校内の庭を横切り、北側から本館を見ることができる大学院棟へと回り込むことにしました。

 大学院棟の3階へとかけ登りました。墜落現場の全体が少しずつ見えてきました。本館そばに立っている10mぐらいの高さの松の木が根本から真っ黒に焼けこげています。消火によって発生した水蒸気でしょうか白い煙が一筋立ちのぼっています。しかし、ここからも正面に現場を見ることができません。木立に囲まれてしまいヘリの残骸を確認することができないのです。今一度周辺を見渡してみました。墜落現場前の道路は、MPらによって閉鎖をされています。テープによって遮断されいて現場に近づくことは無理です。周辺の建物の非常階段、屋上には目の前で起きていること1つもらさず記憶をしようと直視している群衆たちが鈴なりになっています。現場の直ぐ目の前の丘の上に3階建てのマンションが建っていました。そこの屋上は絶好の位置にあります。そこから見ることはできないかと思い、とにかく近づくことにしました。

 裏道から裏道へと迂回をし、現場正面の丘に近づいていきました。この一帯は、マンションやら住宅がならぶ閑静な住宅街となっています。丘を回り込んで2、300mも歩いたところでしょうか、路地をふさぐように何やら長い金属片が横たわっている所に出くわしました。住宅街の個人宅の玄関前に忽然と姿を現したその物体は、その周辺の空間を切り裂いて、まるで地面にその刃を突き立て力つきたような形で、その姿をさらしていました。ヘリのローター部分でしょうか、プロペラの一部であるようなその物体は、玄関前に停めてあった原付バイクを破壊し静止をしています。

 そのお宅からさらに数10mほど進むと、ちょうど現場の正面あたりになるのでしょうか、明らかに周辺の雰囲気は今までの雰囲気とは違います。左手のお宅では、門柱そばの鉄骨製のアーチが飛来してきた何かによってへし折られ倒れています。向かいの家のアルミ製の裏扉には、何かが貫通した穴がポッカリと開いています。その向かいにある給水塔のタンクからは水が噴き出しています。1つ1つの現場の詳細確認は後にして、現場前にあるマンションの屋上へと登らせていただくことにしました。
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